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収納小町コラム

【インタビュー】壁面収納メーカーが語る「あったらいいな」を実現する家具作り




皆さんは壁面収納家具、と聞いて製造メーカーの名前をパッと挙げることはできますか?実は壁面収納家具というのは、タンスや食器棚、リビングボードといった箱物家具の中でも、比較的新しいジャンルの商品なのです。

ほんの15年ほど前までは、建材メーカーの製品を工務店に依頼してフルオーダーで製造するしかなかった壁面収納家具ですが、幅の違う本体ユニットを選び、その上に高さオーダーが可能な上置きを連結して、天井ぴったりに並べることができるセミオーダー壁面収納家具の登場により、短納期かつ工事不要で価格も手ごろになり、私たちの生活に身近な存在となりました。

セミオーダー壁面収納家具の製造においてパイオニア的存在なのが、岡山県津山市で家具製造75年の経験をもつ「株式会社すえ木工」です。
「想いが叶えば 毎日の暮らしが楽しくなる」という家具を通じた新しいライフスタイルの提案をし続ける国産メーカーとして、全国で15万件を超える販売実績をお持ちです。

今回は家具業界歴30年の大ベテラン、株式会社すえ木工 駒宮千秋さんにメーカーの立場から「あったらいいな」を実現する壁面収納家具について余すところなく語っていただきました。
(聞き手:収納小町リビングスタイリスト 千葉知則)

※このインタビュー内容は2022年4月7日時点のものです。本文で紹介する仕様は将来的に変更となる場合があります。本インタビューは、新型コロナ感染拡大予防のガイドラインに従って実施しました。





すえ木工の壁面収納家具への取り組み

収納小町 千葉(以下、収納小町):私たち収納小町が、すえ木工壁面収納家具の初代とも言える「ギャラリー」シリーズを販売して15年になります。現在に至るまでの御社の取り組みをお聞かせください。

すえ木工 駒宮(以下 すえ木工):私たちは岡山県津山市の国産家具製造メーカーです。国産メーカーの中には生産工程の一部を海外で行っていることもありますが、当社は製造から発送までの全ての工程を国内自社工場で一貫して行っています。
規模の巨大なメーカーとは異なり、大量生産を行っておりません。例えば量産品の家具であれば同じものであれば、セッティングを変えずに早く、たくさん作ることができます。
しかし壁面収納家具となるとお客さまの家ごとに天井の高さも、家具を置く設置幅も変わってきます。壁面収納家具ではオーダーごとにそれぞれの製造のセッティングを変える必要があるのです。

これは私たち家具メーカーにとってはとても手間がかかることですが、これでまで非効率とされてきたことを、設備投資や製造現場、受注・出荷業務に至るまで様々な改善を重ねて効率化してきました。
その結果オーダー家具に求められる、サイズ・色・機能といった「お客様のこだわりの実現」を手ごろな価格でご提供できることが可能になったと考えています。


収納小町:確かに15年前の「ギャラリー」シリーズと、最新の「ユニバーサルストレージ」シリーズを比較すると、商品の種類、色、オプション…それぞれの数も桁違いに増えましたね。

すえ木工:それだけお客様にとって理想の家具を実現できること・可能性を増やせたのだと思います。ただしアイテムの数だけたくさんあれば良いというのではなく、様々な工夫をこらしたアイテムを用意しています。
当社が特許を取得した「マジックフィラー」が一番良い例でしょうか。
当社の壁面収納家具全シリーズで採用していますが、1cm単位で幅指定できて本体や上置きの側面にねじ止めで取付できる幅オーダー扉です。




収納小町:「ギャラリー」を発展させた「MG(モノトーンギャラリー)」から登場しましたよね。初めて見たときには衝撃的でした。これ何の意味があるのだろう、と思ってしまいました。


すえ木工:そもそもマジックフィラーは、幅40cm/60cm/80cm…と固定幅サイズの家具ユニットを並べていくと、どうしても15~20cmくらい横壁とのすき間が余って露出してしまいます。元々は目隠し用だった訳です。
ところが実際に販売してみると、壁とのすき間を利用した長物収納だったり、お掃除ロボットのベース基地だったり、壁からのコンセントを取り廻したり…とお客様のアイデアで素晴らしい使い方をたくさん知ることができました。


収納小町:なるほど、ゴルフバックや掃除機をマジックフィラーの裏側に収納をされている例をよく見掛けます。目隠し用の固定パネルではなく蝶番をつけた開きドアにしたことが収納用途としても大ヒットした要因なのですね。




すえ木工:マジックフィラーの用途としてまだあります。マジックフィラーは上置き(本体の上に連結して天井まで高さオーダーできるユニット)にも取付できるのですが、日本のマンションにはつきものの「梁(はり)」を避けるのにも有効です。
せっかく天井まで壁面収納家具を並べても、梁の周囲だけ奥の壁が露出しているのは見た目に残念な感じになりますよね。マジックフィラーを上手に活用すれば、梁やエアコンを避けて壁一面の統一感ある壁面収納家具が実現できます。


収納小町:それに加えて最新の「ユニバーサルストレージ」シリーズは本体や上置きの幅サイズオーダーもできますね。

すえ木工:そうです。一部対応できない商品もありますが、特注幅として1cm単位で指定いただくことが可能です。ただし、あまりに幅を狭くしてしまうと収納家具としての役割を果たせなくなりますので、マジックフィラーと組み合わせてプランニング検討されるのが良いと思います。
また奥壁の梁を避けるには、梁の高さ・奥行にあわせて上置きをL字型にする「梁よけボックス」というアイテムを全シリーズに用意しています。スペースの無駄がなく収納できるうえ、万一の揺れの際にも前倒れの危険性がより少ないアイテムです。





収納小町:やはり日本は地震大国ですから、壁面収納家具の開発は耐震対策との闘いでもあったと思いますが・・・


すえ木工:大型の家具だけに、万一の際の安全対策は最も重要と考えています。新築やリフォームの際に壁に固定工事する家具とは異なり、当社の壁面収納家具は賃貸住宅でも工事不要で設置可能です。
上置き天面に備えた2本のアジャスタを回転させることで、突っ張り板による面荷重で突っ張ることで耐震性能を発揮してがっちり固定します。
また腰高以上の高さのプッシュ扉には、全て耐震ラッチを装備しています。揺れを感知し扉がロックするので収納物の飛出しを防いでくれます。


収納小町:実際、すえ木工の壁面収納家具を天井突っ張りすると、手で押したくらいではびくともしませんね。そうした安心感はとても大事ですね。


すえ木工:もちろんです。当社の壁面収納家具はリビングだけにとどまらず、寝室や子供部屋などあらゆるところでお使いいただけるのが特長ですので、特に就寝時に万一の揺れが発生しても不安なお気持ちにさせない商品を供給して参ります。


すえ木工の壁面収納家具 豊富なシリーズの特長


収納小町:ところですえ木工の壁面収納家具はシリーズも多彩なことが特長ですよね。


すえ木工:はい、販売店様向けのオリジナル商品を除くと現在4種類あります。これまで生産終了したシリーズを含めると10種類以上になるでしょうか。


収納小町:当店のお客様からも、どれを選んでよいか分からないという質問をいただく場合があります。簡単にそれぞれのシリーズを教えていただけますか?




すえ木工:それではまず「MG version3(エムジーバージョンスリー)」からお話しします。初代「MG」を発売したのが13年前ですが、2回のモデルチェンジを経て3代目となった今でも根強い支持を頂いているシリーズです。
モデルチェンジはありましたが、デザインやサイズは初代から継承しており商品バランス的に優れているのが理由のようです。

収納小町:バランスに優れた商品デザインとは具体的に教えてもらえますか?


すえ木工:上置きを載せない本体の高さですと「MG3」は180cm  「ユニバーサルストレージ」「マテリア3」は169cm  「ミール3」は165cm という違いがあります。
当社を含め壁面収納家具の本体高さは170cm以下が主流になりつつありますが、MG3の高さ180cmはよくある本棚や食器棚など昔ながらのベーシックな高さです。
本体だけでも背が高いので、十分な収納力を備えています。

収納小町:壁面収納家具は高さオーダーできる上置きを載せることで、天井まで余すことなく収納できることが最大の特長ですが、そこまで必要ないというお客様もおられますね。

すえ木工:はい、MG3は上置きなしの本体だけでのご注文が増えてきていますね。上置きなしの場合であれば
 ・購入予算的に抑えられる
 ・なおかつ本体に十分な収納力がある
という点でバランスに優れていると思います。

扉・引出しの前板は5種類から選べますし、内装色もアイボリー/グレー以外に共柄(前板と同様の木目)が4種類あります。
本体アイテムもベーシックな棚、引出し収納から、TV台、デスク、ワードローブまで基本的なものは一通り揃っていますのでお客様のご期待に沿えるシリーズです。





収納小町:では次にすえ木工さんで最新シリーズとなる「UNIVERSAL STRAGE(ユニバーサルストレージ)」をお願いします。カタログを見ると驚きますがすごいアイテム数ですね!数えたところ1160アイテムもありました。MG3が316アイテムですからその差は歴然です。

すえ木工:アイテムが多くなった一番の理由は、形状デザインにあります。家具を横から見たときに前面がフラットに揃った「KD」タイプ以外にも、上下で奥行の違うL型の「オルガンタイプ」があります。
同じオルガンタイプでも下台の高い「KE オルガンA」タイプ、下台が低い「KF オルガンB」タイプに分かれます。奥行違いなので本体は上台/下台にそれぞれ分かれます。          

収納小町:MG3には無い特長ですね。オルガンタイプのメリットはなんでしょうか?

すえ木工:オルガンタイプは下台の奥行が42cm 上台と上置きの奥行が32cmです。棚となることが多い上台は奥行が薄く、本やDVDなどの収納に適しています。一方下台は奥行があるので引き出しとしても棚としてもゆとりある内寸です。
また、上台が薄いためお部屋に置いた際の圧迫感も少なくなり見た目にスッキリとした印象になると思います。
下台だけでもローキャビネットとして、高さ違いの「KA」「KB」として販売しています。専用の天板と組み合わせればキャビネットとしてだけでなく「KA」は低さを生かしたベンチにも、「KB」は高さ72.5cmのデスクにもなります。




収納小町:なるほど、たくさんのユニットで様々な組み合わせを実現できるのがユニバーサルストレージの魅力ですね。他にユニバーサルストレージならではのアイテムはありますか?

すえ木工:当社で一番新しいシリーズですので、他のシリーズにはないユニークな発想のアイテムもあります。「リバーシブル間仕切り」です。

収納小町:なぜ間仕切りなんでしょうか?

すえ木工:新型コロナウィルスまん延により、在宅勤務が日常的なものに変化していますよね。でも完全な個室で仕事をできる環境はなかなか用意できないのではないでしょうか。寝室でオンラインミーティングを行うのも気が引けますよね。
そこでリビングを間仕切りで仕切れば仕事に集中できる環境を用意できますよ、とう当社の提案です。小さいお子様がいる環境でも、目の届くリビングで一緒に過ごせるのは大きなメリットではないでしょうか。

収納小町:間仕切りを目的とした置き家具だと、背面が見えてしまうので通常のベニヤ板ではなく化粧を施す必要がありますよね。リバーシブル間仕切りは背面パネルが有孔ボードになっているのが斬新です。

すえ木工:付属の棚板以外でも、市販の有孔ボード用パネルフックなどが使えます。
背面パネルもホワイト/アイボリー/グレーの3色から選べるんです。内装色がアイボリーで背面パネルはグレーにてツートンカラーのようにすることもできます。
ちょっとした遊び心ですが、ぜひ背面パネルを利用したディスプレイを存分に楽しんでいただきたいですね。




収納小町:扉の中に隠す「見せない収納」も必要ですが、背面パネルのディスプレイのような「見せる収納」も楽しめるということですね。


すえ木工:そうです。見せる収納といえばユニバーサルストレージでは木製の扉を使用していますが、扉を「ガラス扉」にオプション変更することができます。
例えば「TV台のフラップ扉だけ」、「幅120cm上置きの扉3枚のうち真ん中の1枚だけ」といった細かな対応も可能です。


収納小町:細かなオーダーにも対応できるというのは製造工場も大変でしょうが、お客様のニーズに可能な限り対応していくというすえ木工の姿勢が現れていますね。
ユニバーサルストレージについては、まだまだ沢山の特長がありすぎて語り尽くせないと思いますので、また別の機会で伺うことにしましょう。



すえ木工:続いて「matelia3(マテリア3)」です。

収納小町:重厚で高級感がありますね。これをリビングに置いたらなんだか偉くなったような気分ですよ。

すえ木工:近年の印刷技術の向上で木目プリントの化粧板も格段に見栄えがよくなりましたが、やはり天然杢にはかないませんね。このマテリア3の扉や前板は
天然杢を薄くスライスして合板の表面に貼り付けた「突き板」ですので、同じ木目は2つとない自然で優雅な天然の風合いを楽しめます。
木目はホワイトオークとウォールナットという、現代家具の定番と言っていい2種類の天然木です。
高級なダイニングセットだったりデスクなどでは天然木を使った商品が多いですが、それらと組み合わせても見劣りしない雰囲気を持ち合わせたシリーズだと思います。

収納小町:マテリア3の商品仕様としての特長はありますか?

すえ木工:TV台のデッキ収納部は「ガラス仕様」と「板扉仕様」があります。「板扉仕様」だとデッキも隠れてしまうのですが、特許申請中の技術によって赤外線リモコンを操作することが可能です。
なるべく木部分を多く用いていますので、ぜひ天然木の高級感ある風合いを楽しんでいただきたいですね。



収納小町:最後となりましたが「Miel3(ミール3)」についてお願いします。

すえ木工:ミール3は当社の壁面収納家具の中で最も個性的なシリーズだと思います。一言でいえばアンティークそのものですね。個性が強いので好みがハッキリ分かれるシリーズですが、熱烈なファンの多いシリーズです。

収納小町:小さくて可愛らしい印象の家具ですね、やはり女性ユーザーさんが多いのでしょうか。

すえ木工:女性の方に限りませんね。高さが低くコンパクトですので男性ユーザーの方でも上置きを置かずにTV台本体だけ購入される方もおられますし、最近ではSNS映えする商品ということでもとても好評を頂いています。

収納小町:なるほど、アンティークな雰囲気はデザイン家電との相性も良さそうですね。

すえ木工:ユーズド感のある古木風木目もポイントですが、レトロな取っ手や半透明の型板ガラス風の仕様にしたことで一層アンティーク感が強調されていると思います。
このシリーズはキッチン向けのキャビネット・レンジボード商品もありますが、全て本体は女性の手が届きやすさに配慮した高さ165cmです。このシリーズのかわいらしさ、やさしさをぜひ一度ご覧いただければ嬉しいですね。


まとめ


収納小町:すえ木工の壁面収納家具について、貴重なお話を聞くことができました。こうしてメーカーさんの思いをお聞きすると、商品が身近に思えますし様々な工夫を凝らしていることがよく理解できます。
最後にこのインタビューでなにかお伝えしたいことはありますか?

すえ木工:はい、実は当社は購入を検討されているお客様に直接質問を受け付けているのですよ。

収納小町:それは知りませんでした。なかなかそうしたメーカーさんは無いのでちょっと驚きです。

すえ木工:当社ではLINEで質問を受け付けていますので、https://page.line.me/728moedq もしくは下記表示のQRコードからぜひお気軽に質問をお聞かせください。



収納小町:すえ木工のホームページには「すえ木工のオリジナル家具が、あったらいいなを実現し、リビング・ダイニング・子供部屋・玄関等、家中の収納生活空間をご提案します」と書かれていますね。
まさにお客様のニーズに寄り添った素晴らしいモノづくりに取り組んでいるメーカーとしての真摯な姿勢をあらためて感じることができました。本日はありがとうございました。



撮影協力:埼玉県越谷市 ルームスタイリングリライフ(https://ioo-sofa.net/hpgen/HPB/entries/97.html

 

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